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概要

nl86

クロマチンの最も基本的な構造はDNAとヒストン蛋白質で構成されるヌクレオソームです。Timothy J. Richmond(ティモシー・リッチモンド)博士は、ヌクレオソーム構造のX線結晶回折像からその構造を世界ではじめて原子レベルで明らかにしたことで有名ですが、特別講演ではその詳細について最先端の研究成果が発表されました。ヒストン蛋白質は、そのアセチル化などの活性や反応性などの機能を変化させる化学修飾を受けます。細胞はヒストンの修飾状態をクロマチンの「ことば」として読み取り、それに従って設計図を実行します。セッション3、5、6では、「ことば」がどのように発せられ、細胞との間で会話され、意味づけられているのか、「ことば」の文法を分子レベル明らかにする研究が発表されました。クロマチンの重要な機能の一つは、オンとなった遺伝子がRNAとして読み取られ、蛋白質を作ることにあります。最近、RNAにはそのような機能とは別に、クロマチンのオンオフにも影響を与えることが明らかになってきました。セッション4では、そのようなクロマチンをオーガナイザー森川先生制御するRNAの役割について議論が行われました。また、John Abelson(ジョン・アーベルソン)博士の特別講演では、出来たばかりのRNAが成熟して完成する過程で、余分なものを切り離して再度つなぎ合わされるスプライシング反応に関する長年にわたる博士の研究のこの分野への貢献を伺い知ることができました。クロマチンは、遺伝子のオンオフを介して、最終的には生物の形作りや行動、思考までも決定、影響を及ぼしています。セッション7では、このようなクロマチンがもたらす「遠隔操作」について議論が行われました。この中で、クロマチンが、体のストレス反応、血液細胞が作られる過程、記憶や知能などの脳機能などにおいて果たす役割が報告されました。以上のように本カンファレンスでは、クロマチンについて、原子・分子のレベルから個体のレベルに至るまでの様々なレベルで大きな役割を果たしていることが再認識されました。今後の研究として、個々の機能をさらに詳しく明らかにするとともに、ひとつのレベルで理解されたことが、それよりも高次のさらに複雑なレベルの現象の理解にどのようにつながるのかを明らかにする戦略を組み立てる必要性が指摘されました。これらを基に、新たな学術の芽が生まれることが期待されます。session2特別講演2“Structural aspects of chromatin decoding(クロマチン・デコーディングの構造学)”クロマチンの立体構造を原子、分子レベルで解明“The nucleosome: Guardian and gateway to the genome(ヌクレオソーム:ゲノムを守りゲノム情報を読み解く)”Dr. NewmanDr. AriyoshiDr. MurakamiDr. KurumizakaDr. Richmond座長:Dr. Morikawasession3“Transcriptional decoding of chromatin(クロマチンをRNA転写を介して読み解く)”転写とカップルしたクロマチン構造やエピジェネティクスの変化Dr. ShiDr. TachibanaDr. LupienDr. NakanishiDr. Murakami座長:Dr. IgarashiAugust.2014 vol.86IIAS NEWS LETTER9