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概要

nl86

テーマ2「精神発達障害から考察するdecision makingの分子的基礎」自閉症・精神発達遅滞をはじめとするヒトの発達障害は、最近では約100人に1~2人存在すると報告されており、頻度の高い疾患で、社会にとっても大きな関心が寄せられている課題です。自閉症の中核症状は、相互的な対人関係の障害、コミュニケーション機構の障害、興味や行研究代表者辻省次動の偏り(こだわり)の3つの特徴があると言われ、このような障害の根本的な原因は解明されていません。そこで、本研究では、実験動物を用いた分子、回路研究からのボトムアップアプローチ、霊長類を用いた脳の高次機能研究からのトップダウンアプローチ、さらに、臨床医学からヒトの精神発達障害の分子病態を読み解くアプローチ、という3つの異なるアプローチの交差する学際的な研究分野を創成し、そこで意思決定機構、相互的な対人関係・コミュニケーション能力をはじめとする脳の高次機能とそれらが発達障害の病態にかかわる分子機構を解明しようとするものです。研究プロジェクトの紹介テーマ3生命活動を生体高分子への修飾から俯瞰する研究代表者岩井一宏タンパク質、DNA、脂質などは、私たちの身体が働くために大切な役割を果たしており、生体高分子と呼ばれています。生体高分子はいつも同じように働いているのではなく、状況に応じて修飾(化学修飾)を受けることで機能が調節されています。それぞれの修飾による生体高分子の機能の調節機構は、その修飾が関連する生命現象、例えば、遺伝子の転写調節やタンパク質の分解などの研究者達だけで議論されていることがほとんどです。生体高分子の修飾は修飾する因子、様式には多様性があり、その違いによってタンパク質などの修飾をされる分子の機能を調節するメカニズムは異なりますが、生化学的な視点から見れば様々な修飾に共通する点も数多くあります。そこで本プロジェクトでは、生体高分子の修飾に関与する研究者を一堂に会して修飾の特徴、役割の観点から多様な生命現象の制御機構について議論して、生命科学に新たな視点を提供することを目指しています。テーマ4設計哲学-俯瞰的価値理解に基づく、人口財の創出と活用による持続可能社会を目指して研究代表者梅田靖人間社会は歴史の中で、多種多様な人工的な財(モノ、コト、サービス、インフラ、組織、仕組み、社会、法体系など)を創出し、構成してきました。これらは生活の利便性を高め、文明レベルを向上させてきましたが、他方で、環境、生存などの問題といった大きな副作用をもたらしてきたこともまた事実です。近年、設計を取り巻く諸環境は刻々と変貌し、それに適応した社会の価値観に基づく設計の進化が求められます。そこで、本研究では、社会の価値観と設計との相互の関係性について俯瞰的視点から議論するとともに、今後の設計の在り方を含む、設計倫理の在り方を検討するものです。特に、ケーススタディの対象として、日本社会と発展途上国の社会という異なる二つの社会における人工財にまつわる環境問題を想定し、両者を比較することで社会の価値観と設計との相互の関係性を明示化することを試みます。テーマ5総合コミュニケーション学研究代表者時田恵一郎コミュニケーションは一般には「ヒト個体間の言語を介した知覚・感情・思考の伝達」とされますが、それはヒトの脳の認知脳科学的・生物学的基盤の影響を大きく受けており、ヒト以外の生物に見られる非言語的なコミュニケーションとも特性を共有しています。さらに、ヒトのコミュニケーションは「知識」や「情報」をミームとして進化させ、例えば噂やコンピュータウィルスなどの非生物的進化をもたらし、生物学の枠にも収まらない状況にあります。従来、社会科学的な研究対象であったコミュニケーションの問題を、生物学、情報科学、経済学、経営学、環境科学、物理学、複雑系科学、科学哲学等の諸分野の研究者が学際的・包括的な研究交流を通じて「総合コミュニケーション学」の確立を目指します。そして、医療コミュニケーション、防災コミュニケーション、科学コミュニケーション等のコミュニケーションが絡む様々な研究領域と連携しつつ、種々の社会問題への応用を図ります。August.2014 vol.86IIAS NEWS LETTER15